日本のごく普通の会社員『七瀬空《ななせそら》』は、幼い頃に祖父母の家がある山の中で、目の前で兄と飼い猫が消えるという体験をする。
それ以来、兄は行方不明のまま、飼い猫も戻ることはなかった。
なぜ兄と猫は消えたのか。
その答えを探すかのように、空《そら》は何度も祖父母の家がある山へと足を運んだ。
祖父母が他界した後はキャンプ道具を持参し、やはり山へと。
そしてその日も、仕事の休みを利用して、空は山へやって来た。
今まで何度も足を運んだ、兄が消えた沢の上に立ったとき、突然誰かに空の身体は突き落とされた。
しかし、沢へと転落するはずの身体は一向に地には着かず──真っ暗の不思議な空間へと。
「ここにお呼びしたのは、貴女をあるべき世界へと戻すためです。貴女は生まれる世界を間違えました」
「……はあ?」
空はいきなり現れた『管理者』を名乗る青年に、魔力と魔法のある世界へ転移を告げられる。
そして青年の口からは、空がずっと探し求めていた、消えた兄と飼い猫の驚きの真実が語られたのだった。
しかも、魔力はかなりあるものの、魔法の適正は皆無であり、せっかく魔法世界に転移するというのに、一切の魔法は使えないという──
そんな踏んだり蹴ったりな新生活が(ほぼ)強制的にスタートしたのであった。
【※恋愛要素はかなり……薄いかもしれません】