この世界には勇者と魔王が存在する。
いや、"存在していた"と言った方が正しい。
人族の希望と魔族の王は自らの種族の安寧を求め争い、700年前に双方ともに命を散らしてしまった。
それから時は流れ、現在。
遂に、新たな魔族の王が誕生してしまったのだ!
だがしかし!!
人族には勇者が居ない、神からの神託も無い。
このままでは脆弱な人族の敗北は目に見えている。
最愛の娘も魔王に拐われてしまった。
だから、王様は考える。この状況を打開しうる策を。
ふと、王様が顔を上げるとそこには、王女が魔王に拐われた事を伝えに来た兵士が目に入った。
「うん、こいつ勇者にすればいいんじゃね!」
王様はバカだった。
超がつくほどの大バカだった。
だが、状況が悪かった。
普段なら大臣達が王様を止めるのだが、今は王女が失踪したということで対処に当たっている。
今の王様を止めれる者はここには居ない!
そして王様は声高らかにこう宣言するのだった。
「お主が今日から勇者じゃ!」