身に覚えのない罪を着せられ、婚約者であった王子から婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリアーナ。地位も名誉も、全てを失い、雨の降る森をさまよう彼女がたどり着いたのは、ひっそりと佇む一軒のアンティーク店『月影の道具店』だった。
そこで彼女が出会ったのは、無口で気難しいが腕は一流の店の主「呪具師」と、「呪われた」道具たち。勝手に喋り出すティーカップ、持ち主の悪夢を食べてしまうぬいぐるみ、覗き込んだ人の本音を映し出す手鏡……。
行くあてのないリリアーナは、ひょんなことからこの店に住み込みで働くことになる。
最初は呪われた道具たちに戸惑うリリアーナだったが、彼らが持つ「呪い」には、それぞれ切ない過去や理由があることを知っていく。そして、店を訪れる様々な悩みを抱えた客たちと接するうち、彼女の中に眠っていた不思議な力が、道具たちの心を癒し、呪いを解く鍵となることに気づき始める。
これは、全てを失った令嬢が、過去への復讐ではなく、不思議な道具たちとの出会いを通じて自分の本当の幸せと居場所を見つけ出す、心温まる再生の物語。