この世界には、人間と魔族が存在している。
彼らは長年対立を続けながらも、表立った争いは起こさず、静かに均衡を保っていた。
だが、ほんの15年ほど前のこと。
突如「魔王」と名乗る存在が、人間へと戦争を仕掛け始めた。
いくつもの国が潰され、多くの人々が死んだ。
そして戦争が始まって5年ほど経ったある時、とある大帝国が賭けに打って出た。
それは、異世界から「魔王」を倒す力を持った「勇者」を召喚するというもの。
「勇者」の召喚によって戦況は一転。
それからたった2年で「魔王」は討たれ、魔族による殺戮も徐々に無くなっていった。
……そして8年の時が経った今。
もはや魔族など、人間にとって脅威ではなかった。
「勇者」によって多くの凶悪な魔族が討伐、あるいは封印され、現在生き残っているのはほとんどが低級種ばかり。
弱い低級種は人間によって乱獲され、いつしか体のいい奴隷として扱われていた。
「魔族に人権などない」
その言葉のもとに、魔族狩りが行われた。
けれどそんな中で、「魔族の復権」を唱えるものがいた。
それは、かつて「魔王」を討伐し、魔族の地位をここまで脅かした張本人……。
これは、魔王討伐を終えた勇者が、たったひとりの友人のために再び世界を変えようと旅を続ける物語。