その国は、青い桜の森に侵食されていた。 年に二回しか花を散らさない、不思議な青い桜。 その花は毒を含む白い霧を放出している為、国内は三つの区画に分断を余儀なくされている。 森の中を通り抜ける事が出来るのは、伝言局と呼ばれる組織に所属する、毒素の抗体を持った特殊な配達員達だけ。 彼らは日々、国民達の唯一の連絡ツールであるメッセージカードを届ける為に、毒の森の中を行き来している。 主人公のリグレットは、伝言局に所属する新人の特殊配達員。 周囲の人々に見守れられ、少しずつ成長していく彼女は、次第に桜の木とそれにまつわる出来事に巻き込まれていく。 ▼2025.2 人物紹介のイラストを新しくしました。 ▼毎週金曜日の20時頃更新予定です。 ▼この話はカクヨムにも投稿しています。

百年前に起きた星の嘆き（アステリラメント）と呼ばれる大災害により、陸地の半分以上が海に沈んでしまった世界。 そこに残された五つの島国の中で、三つ目に大きな島センデンスの最南端には、穏やかな港町リシャルジアがある。 女手一つで育ててくれた母を亡くしてリシャルジアにやってきた少女ルエラは、頼りにしていた祖母まで亡くし、それでも懸命に海岸近くの食堂で働きながら日々を過ごしていた。 ある日、ルエラは人助けをしている最中に助けてくれた人魚族の青年マーレに出会う。 何故か彼に気に入られてしまったルエラは、その日以来、脅しとも取れる状況に追い込まれ、毎日のようにマーレに会いに行く事になってしまう。 小さな港町で起きる、いっぱい褒めてくれる無邪気な人魚男子と、溺愛されて振り回されている苦労性ヒロインの、ほのぼの恋愛ファンタジー物語です。 ＊＊＊ （！）カクヨムでの中編コンテスト用に書いていたものに加筆したものになります。

クリスマスまで後少し。 会社員の鳥羽かぐらは、通勤中に後輩の深山奏斗と会い、クリスマスプレゼントの話をしていた。 特別、クリスマスにプレゼントを欲しいと思わない。 そう言ったかぐらに、深山は驚きを隠せずに声を上げてしまう。 彼はある人に、クリスマスプレゼントを渡したい、と思っていたから。 pixivのクリスマスの企画で書いた話です(一部加筆修正しています) pixivの方にも投稿しています。

「私、あなたの事が気になるんです」 新しいアパートに引っ越したばかりの社会人、幸喜は、突然見知らぬ女子高生からそう告げられた。 アパートの前にあるバス停から、ベランダにいた幸喜をずっと見ていた、という彼女が気になるというものは、なんと幸喜が干していた洗濯物だという。 干し方や洗剤、洗濯機や洗濯グッズにい至るまで、洗濯にまつわるものが大好きだという謎の女子高生・茅乃。 何故か幸喜と洗濯の話をしたいと言って付きまとう彼女の必死な様子から、何か問題を抱えていると考えた幸喜は、仕方なく彼女の話に付き合うようになっていく。 そんな奇妙な関係性の二人は、互いに誰にも話す事が出来ずにいた深い心の傷を負っていた。 洗濯を通じて距離を縮めていく二人が、自分達の問題を見つめ直し、新しい選択をしていく物語。 この話はカクヨム、アルファポリスにも投稿しています。

その国では毎朝、城の側に浮かぶ空中庭園から、歌姫により国民達へ歌が届けられる。 歌姫の歌は平和の象徴であり、その歌が聞こえる事で、国民たちは安心して過ごしていた。 ある日、歌姫は病によりその美しい歌声を発する事が出来なくなってしまっていた。 国王達が彼女の声の代わりとして密かに用意したのは、七色の声を出す事が出来ると言われている、飛べない翼を持った有翼人の少年・アキレアだった。 歌えなくなった歌姫と、彼女の声の代わりになった少年。 空中庭園で歌姫として務めを果たす二人は、次第に互いの境遇を憐れみながらも、交流を通じて距離を縮めていくようになる。 この話はカクヨムにも投稿しています。 2023/10/08 タイトル（鳥籠→空中庭園）変更とそれに伴い加筆変更をしました。 2024/04/29 エピソード追加+全体的に加筆修正しました。

街外れにある森の奥で出会った、かぼちゃ頭の青年と赤い髪の少女の不思議な話。 この話はpixivにも掲載しています。

「それは、全てを滅ぼしても叶えたい恋だった」 光の届かない深いその森は、夜の国と呼ばれていた。 異形の魔物達が蔓延り、人間ならば数時間で狂気に陥ってしまう森の中で、白銀の髪を持つ少女は一人の魔物に拾われた。 異形を纏める巨大な角を持った国主、浴槽に沈む潮騒の魔女、午後三時だけに現れる蝙蝠少女、カトラリーと腐敗した身体の悪食コック、千切れた羽を鳥籠に閉じ込めた時守り——、そんな異形の者達と共に、森の奥に佇む洋館で過ごしていた少女は、ある日、ひとりの人間の男を拾ってきた。 少女が拾った男は、少女とその周囲に変化を齎し、やがて夜の国を少しずつ蝕んでいく。 この小説はpixiv、カクヨムなどにもアップしています。

高校生の豊橋修哉と同級生の相田愛莉がお互いにチョコレートを貰いたくて頑張る話。 pixivのバレンタイン企画で書いた話です。

実家を出て仕事に追われ、ぼんやりと追い詰められていくような日々を過ごしていた長波桃花は、ある日幼い頃からずっと大好きだったゲーム「グラーティア・ストーリア」のコンサートが開催される事を知る。 当時大好きだったゲームの画面や音楽に、色褪せていた世界が鮮やかになっていくのを感じた桃花は、コンサートの帰りに階段から落下し、目の前が見た事のあるけれど現実ではない世界と、「グラーティア・ストーリア」の主人公・ヴァレンと出会った。 ゲームとは違う性格、ゲームのシナリオを舞台のように演じるキャラクター　達に違和感を覚えながらも、優しく接してくれる人々と世界に少しずつ心を開いていく桃花は、しかし、少しずつ起きていく変化によって大きな戦いに巻き込まれていく。 2023/02/25 タイトル変更しました。 この作品はカクヨムにも掲載しています。