橘 悠花《たちばな はるか》は生能《いくの》中学校に通う中学一年生。
全校生徒二十六名の小学校から一クラス二十六名の中学校に上がった悠花が、ようやくクラスの雰囲気に慣れてきた――そんな七月初旬のこと。
彼女は、やむにやまれぬ事情から、一人で〈こっくりさん〉の儀式を行なうことになった。
喚《よ》び出すことができたのは、真白な体毛を持つ大きな、おおきな〈こっくりさん〉。
〈こっくりさん〉は問う。
「生きるとは、なんなのだ」
答えに納得するまで憑《とりつ》くことになった〈こっくりさん〉に、悠花は何を答えるか。
悠花の、長くて短い夏が今、はじまる。