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連載 6エピソード
魔王は待っていた。 数百年に1人生まれてくる勇者の存在を。 魔王は別に世界征服に興味があるわけでもない。 現在ある魔王の国家を大きくしようと人間の国 を攻めるつもりもない。 特にすることもなく玉座に座っているがなにか強い野心があるわけでもない。 しようとすれば世界征服も出来るかもしれない。 けれど、そうすることにより人の国家にごくまれに現れる勇者は二度と生まれなくなるだろう。 魔王の支配する世界として世界は彼にとって退屈な物になってしまうだろう。 魔王は勇者と戦うのが好きなのだ。 勇者が仲間を引き連れこの玉座の前に現れたとき、ただならぬ興奮が生まれるのだ。 今まで幾度と無く勇者は現れた。 その戦いで一度たりとも負けたことはなかった。 ギリギリの戦いは何度かはあったが、それでもすべての勇者に勝利してきた。 その戦い一つ一つが魔王にとって至福の時間であったのは言うまでもない。 早く勇者と死闘を行いたい。 負けるつもりはもちろん無い。 血の湧き上がるような戦い 命のギリギリの駆け引き 想像するだけで魔王の口元が少しにやけている。 29年前、魔王は勇者が生まれたのを感じた。 200年ぶりの勇者の誕生にその夜は興奮し、眠ることすら出来なかった。 またあの死闘が行える。 それから毎日、玉座にて、勇者が現れるのをまった。 だが、29年たった今もまだ勇者は現れることはない。 「なにをしている・・・」 今までの勇者でこんなに時間がかかる勇者はいなかった。 早いものなど10年くらいでこの玉座の前に現れた。 勇者の気配は未だ健在だ。 どこかで死んでしまったわけでもない。 生まれた土地から移動している様子もない。 「なにをしている・・・」 早く死闘を繰り広げたい魔王は苛立ちを覚えた。 魔王はふと、何かを思いついたような顔をした。 すると魔王は玉座から立ち上がり、何度も勇者と戦いを繰り広げたこの広い部屋を後にする。 その姿は闇に包まれ、その闇の中から1人の人間の男が現れる。 その男は歩き続ける。 やがて、その男は魔王の城を出ると、勇者の気配のする方角へと歩き出した。 今、痺れを切らした魔王が動き出したのだ。 人の姿となり、勇者の元へ
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー] R15残酷な描写あり
最終更新日:2020年10月01日
冒険 ギャグ 魔王 勇者 西洋 魔法 男主人公 和風 読了時間:約52分(25,659文字)