孤独だった侯爵令嬢スカーレット・ブルティア。
みんなから愛されている聖女を恨んでしまったが故 、彼女は聖女に毒を盛って殺めようとしてしまう____
そんなスカーレットが牢屋で命を落としたのはかつての話で、スカーレットはスカーレットという名のまま、“別の”世界の公爵令嬢として生まれ変わる。
髪色も瞳の色も、顔立ちだって全然違う新たな人生のスカーレットは、母も父も健全だった。
ごく普通の環境に生まれたスカーレットが人と違うことといえば、悲しい前世の記憶を持っていること。
そんなある日、スカーレットの元に弟だという少年がやってきた。彼の名はギルバート。
スカーレットは天使のような弟を溺愛する。
かわいくてかわいくて、大切な弟。
だがスカーレットは弟のために何かをしたいと色々試みたものの、それはすれ違ってばかりて、喜ばせるどころかギルバートを傷つけてばかりだった。
可愛い弟の無邪気に笑う表情が見たい。
そう願うものの、悲しみに揺れたその瞳を、自分を嫌悪するその表情を、愛おしいと思ってしまうのも事実だった。
仲良くしたいけれど、上手く出来ない。
スカーレットの不器用で歪んだその性格は、成長しても変わることはなかった。
今世では上手くいっていたはずなのに、孤独でなかったはずなのに、気づけば友人はいず周りから目を背けられていることに気づくスカーレット。
これじゃあまるで、昔の悲しき令嬢と同じだ____
自分は一体何処で間違えてしまったのだろうか。
スカーレットは後悔を胸に秘めながら、愛おしい弟を前に、バニラの香りがする紅茶を口元に運ぶのだった。