「やあやあ」
民話学者である教授が猫を抱きながら席に座った。
教授は私と話をする時はいつもこの猫を抱くようになった。
猫について詳しく聞いたことはないが、もしかしたらどこか悪いのかもしれない。
「教授、その猫を随分可愛がってらっしゃいますね」
「なに、最初は保護するだけのつもりだったのだがね、いつの間にか研究室に入り浸るようになっただけのことだよ」
そう言って教授は静かに笑みを浮かべた。
私も精一杯の笑顔を猫へと向けたものの、猫はこちらの方を見ようともしないようだった。
あからさまな落胆を自ら打ち消すように、私は本題へと入ることにした。
「それで、今回はどんな話を聞かせてくれるんです?」
「そう、それだ。 君、イギリスのフィスタという村を知ってるかね?」
「いえ、一度イギリスには行きましたが...」
「そこで教えてもらった話なのだ。 聞かせてあげよう」