遡ること、時は大戦争時代。男は国軍兵団の魔法使いであった。
闘争の果てを知らぬ、忠君愛國の志を抱きし、不退不滅の一兵卒であった。
だが、彼は魔法使いだ。
何処まで行こうと魔法使いだ。
戦いでしか、死の渦の中でしか我を示せぬ特攻兵器に過ぎなかった。幾星霜もの屍を踏み越え、魔法使いとしての儚い宿命に従事する他無い、暗く、冷たき人であった。
日が沈み、死体を焼き、朝日が上り、魔法を使い人を屠り、また日が沈めば死体を焼く。
繰り返される死臭の中、男は何億回目の目覚めの訪れに、静かに眼を開く。
夜明け。それは死に行く我等魔法使いを見送る静かな母であり、残酷な闘争の再来を意味する象徴。
闘わねば。祖国の為に、我が愛しき祖国の為に。
しかし男を迎えたのは、まだ死の香らない未知の穴ぐらであった。
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー]
残酷な描写あり
最終更新日:2021年12月27日
オリジナル戦記 異能力バトル 冒険 ダーク 男主人公 西洋 中世 近世 魔法 タイムトラベル ミリタリー 職業もの
読了時間:約14分(6,630文字)