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連載 6エピソード
ーー彼女は雨に濡れながら、泣いていたーー 遠目からずっとこちらを見ていている彼女は、今にも壊れそうな顔で泣いていた。そんな女の子を見て不謹慎にも見とれてしまった僕は、彼女と目が合った。数秒にわたり沈黙が続く。外の風はひんやりと冷たく、降り続ける雨は僕たちを濡らした。 どれくらい時間がたっただろう。沈黙が続いている中、初対面の僕たちは同時に、、、舌打ちした。 僕は感情を人よりも敏感に感じ取ることができる。その思いが強ければ過去に何が起きたのかをある程度把握できる力だ。 「君は、人が死んだ瞬間、何を思っているか想像できる?」 「私は体験できるよ。最後の瞬間は決まってこういうんだ。どんな人も、まだ死にたくないって」 そう彼女は、誰かの重荷を背負って生きている。彼女は憑りつかれた思念体、この世に未練を抱えた人々の死の瞬間、その記憶を事細かに体験することができる。幸せな死に方など、僕の知る限りそうあることではない。彼女はその最後の瞬間の絶望を、物心がついた時から体験し続けているのだ。 「ねえ、ケイくん、私はこの能力を使った時の記憶がないんだ。だからね、私には君のような記憶を読み取れる人の協力が必要なの」 思念体がこの世からいなくなる条件は一つ、実際に起こった死に方をその人に自覚させること。納得云々ではない。自覚してしまった時点で思念体は消えてしまうのだ。 ーー誰が幸せになるんだ。だってそんなこと無意味だろーー 彼女は、投げ出さない。それがどんなに苦しい死に方だったとしても、それを受け止めて立ち上がる。本当に救いのない物語はきっとこのことだろう。現実に起きたことは変えられない。つまり意味のないあがきでしかないのだ。 「その人がたどった道を変えることはできなくても、一緒に考えて彼らがそれを受け止める手助けをすることはできる。だから私は君に助けを求めるよ。彼らに現実を突きつけるピースを用意してほしい」 「私が現実で起きたことを体験して、君に情報を提供する。あなたは真実を見つけ出して彼らの旅路に終止符を打つ。」 「僕に拒否権はないの?」 「え、だって君は拒否しないよ。君は私と違って誰も傷つかない方法を模索する。だから私の提案も断らない」 「僕は君が嫌いだ。」 「うん私も。」
作品情報
ローファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2020年09月09日
日常 ミステリー サスペンス シリアス ダーク 平成 超能力 男主人公 和風 学園 読了時間:約23分(11,495文字)