明の嘉靖年間。福建沿岸の漁村「石橋村」で育った少年・林浩は、厳しい海禁政策により海に出ることすら禁じられた日々を過ごしていた。家族を支えるために密かに舟を出した彼は、謎めいた“海の声”に導かれるように海難に遭い、敵であるはずの倭寇に捕らえられる。
彼を救ったのは、倭寇頭目・鬼丸兵介の娘、佐久夜(さくや)。冷静さと優しさを併せ持つ彼女に惹かれつつ、林浩は倭寇の中で「異邦の水夫」として生きる道を選ぶ。だが、倭寇の世界は一枚岩ではなく、内に複数の派閥、裏切り、暗躍する密貿易者、そして明朝内部の腐敗官僚とつながっていた。
航海の中、林浩は**海妖(かいよう)**と呼ばれる謎の海の怪異の存在にたびたび遭遇する。それは父の失踪と深く関わっていた。やがて明らかになる父の過去、倭寇との因縁、海禁政策の裏に隠された国家機密。
佐久夜との間に生まれる想いと対立、かつての故郷・福建を襲う倭寇の矛先、そして自らが属する“敵”の世界への疑念と葛藤。林浩は明と倭寇の狭間で揺れながらも、真実と自由を求めて、やがて「東海の英雄」へと成長していく。
最終章では、明軍・倭寇・海妖の三勢力が入り乱れる大激戦が繰り広げられる中、林浩は父の仇と向き合い、佐久夜との運命を決する。そして——東海に、新たな時代の夜明けが訪れる。