大正時代によく似た、異世界の日本。
子爵家の跡取りである春花薫は、気が弱く、目立たないのが好きな男子高校生。
ある日、
自分がよりにもよって乙女ゲームのヒロインであることに気が付いてしまう。
十六歳の誕生日を前にして、当主である母からは、
「跡取りとして、しきたりに従い、
厳原冬志と結婚するように」
という命令が……。
しかし冬志は男性。
「氷の貴公子」とあだ名される冷たくシャープな美貌の持ち主である冬志は
薫の唯一の幼馴染みだったが、
数年前なぜか一方的な絶縁を言い渡されてから
疎遠になっていた。
どうやら、薫は本当なら女性ヒロインとして生まれる予定だったのに
転生のときの手違いで男になってしまい、
シナリオが強制進行されているためにこんなことになっているらしい。
このままでは五人の〈花婿候補〉から求愛され、
誰かの嫁にされてしまう。
「間違えて乙女ゲームのヒロインになってしまったせいで、
好きでもない男性の花嫁になってしまうなんて……!」
さらに、冬志はゲーム内の悪役で、
このままでは悲惨な未来が待っていることもわかる。
シナリオで決められた運命を避けるべく、
薫は、厳原冬志と手を組んで、全ての攻略相手を撃退しようと奮闘する。
果たして薫は、尊敬する冬志を助けつつ、
無事にヒロインをやめて、目立たない生活に戻れるのか。
そして、冬志はなぜ薫に絶交を言い渡したのか、
それなのになぜ薫と手を組むことにしたのか……
冬志の真意とは……。