忙しなくバタバタと走る足音。
誰かが手元の紙をめくる音。
遠くでは指示を飛ばしている声。
何となく空気が熱いような、浮き足立ったこの感覚。
少しでも気を抜いたら、ここ数日の睡眠不足と筋肉痛と疲労感がドッと押し寄せてきそうで、きゅっと唇を結んで気合いを入れ直す。
「本番1分前ー!」
一度大きく深呼吸して、自分の中に満ちる光を感じる。
ゆっくりと力を解放すると、それらは見えない電波のように伸びていって、四方八方へと拡散していった。
遠くまで届け、と念じながら前へと向き直る。
「本番5秒前! 4、3…」
――届け……!
聖女を必要としないはずの平和な世に、なぜか喚び出された聖女様はテレビマン。
おおらかな王室一家と過ごすうちに備わった能力が判明して……?
律儀だけど毒舌な第二王子に叱咤(?)されながら、国営放送の開局を目指して奮闘します。