人生なんて、大嫌いだ。
何故、自分には空腹を満たすだけの生活が出来なかったんだろう。どうして、自分を繕えるだけの才能が無かったんだろう。
過去の人生なんて、振り返りたくもない。思い出すことすら吐き気を催す。無くせるのなら、犯されたって構わない。
逃げて逃げて逃げて。
ひたすらに何処までも逃げ続けたいと。でも、そんな事をしても変わらないって知っていても。
頭の中が割れそうで、それでも簡単には壊れてくれなくて。
壊れたいと泣き疲れた自分と、壊れたくないと無理矢理生き抜こうとする自分が反発しながら、体の内側を蠢き合う。
そんな、ただ堕ちて逝く自分を変えたのは、彼だった。
うずくまる自分に彼は、声をかけたのだ。とても温かい声だった。
唐突に彼は、一つの可能性を提示してきたのだ。
それは、一人分の戸籍とその後の人生。
これは夢?いや、夢でも何でも良い。だから、けして覚めないでと心の奥底から渇望した。
そんな頭を支配していた物を、彼の声が粉々に叩き潰していく。
例え嘘だったとしても、何も変わらないのだから、簡単に受け入れる事ができた。
ソレを受け入れた途端、涙がほを伝う。枯れ尽くしたとばかり思っていた物が、巡り廻る感情と共に溢れだした。
これで、変われる。
新しい自分が。
新しい人生を。
新しい世界で。
新しい未来に。
新しい存在と。
そして、私は世界を羨むのを止めた。
人生なんて、これからだ。