むせ返るような土と草の匂いの中で目覚めると、大きな満月が空に浮かんでいた。街灯もない、月明かりだけが主張する見覚えのない場所。
そこに現れたのは耀という美しくも儚げな、直衣姿の男だった。
「さやけきは月影なるかあらはれし はかなく見ゆる月の精かな」
(美しく輝いているのは月の光だろうか それとも目の前に現れた頼りなげな月の精だろうか)
美しい声で詠み上げられた和歌に心が震えた。
まるで絵巻物のような、平安王朝文学の世界みたいだった。
都で一番の色男と名高い耀の屋敷に滞在し、耀は慣れた様子で私の心を幾度もくすぐった。好きになるのにそう時間はかからなかった。
けれど彼は今日も他の女のところへ出掛けていく。そして私はその準備を整える。
好きと嫉妬が交錯する中、耀のライバルだという中将が現れ……。その企みが怪しく月子に手を伸ばす。
甘くも切ない、和風異世界恋愛です。
『源氏物語』好きな作者がオマージュして書いた作品です。
知らなくてもお楽しみいただけます!敷居はひっくひくですので気軽にお読みください。
『源氏物語』好きな方、古典に造詣のある方、おそらくニヤニヤしながらお楽しみいただけるかと思います!
どのあたりがオマージュなのか考えながら是非。
物語に登場する和歌は自作です。( )内に訳をのせていますが、なにぶん素人ですので気になる点があればご連絡ください!
身分差 ヒストリカル 古典恋愛 時代小説 和風 イケメン 嫉妬 平安 和歌 文学少女 じれじれ ハッピーエンド 源氏物語
読了時間:約178分(88,809文字)