三黒さんはよくポケットから拳銃を取り出す仕草をして、そのままバキューンと撃つ動作をする。彼女は割と猟奇的である。見た目は快活な日本人乙女であるため、やたら発砲するという海外ドラマチックな奇行と相反する。彼女を評するならば、正月に一緒に羽根つきをしたい、そんな思いを湧かせる人だ。その目に見えぬ銀色の弾丸にどんな意味が含まれているのか、三黒さんは教えない。当然だろう、誰にだって人には言えないミクロな超能力があるものだ。
一方、その三黒さんに先輩と呼ばれ、定期的に銀色の弾丸を撃ちこまれる男がいた。彼は「恋愛検察官」として他人の告白現場に割り込み、ハズカシイ情報を暴露して回る卑屈な奴である。青空広がる校舎屋上にて、今日もいつものように美女が告白されている現場に割り込む。すると、ふられた男が「飛び降りてやる」と言い出した。しかし、誰も気に留めない。さらには、「もう、死ぬならさっさと自殺してよ」という美女の卑劣な言葉が飛んだ。
「これは自殺じゃない、恋殺だ」
ふられた男が妙なこと言い出した。
「犯人はお前だ」
男が美女を睨んだ。
三黒さんと先輩、有っても無くても違いはないミクロな超能力、その他もろもろの生徒を巻き込んで、群像劇的に日々の青春が進んでいくのである。
日常 青春 学園 現代 群像劇 超能力
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