『龍殺しの一族』『聖剣の勇者』として産まれたジュリア・エッケザックスは、邪龍と壮絶な戦いの末和解し、祖国オリオン王国に凱旋した。しかし、国王と結託し待ち構えていた婚約者アルベルに裏切られ、財産を、功績を、身分を、仲間を……築いた人生の全てを奪われ投獄される。
聖剣の加護で不老不死となっていたジュリアは何年も続く虚無の地獄を味わうが、やがて昔の仲間に救出され、西の大陸にあるギネビア王国に流れ着いた。
そこで偶然釣りをしていたヴィクトール・アレクサンドロフ公爵に逃亡してきた奴隷と勘違いされて世話をされる。
ヴィクトールは少年時代の事故で親戚や他の貴族から疎まれ、人間不信に陥っていた。
その為、どこか自分と似た雰囲気が漂うジュリアに心惹かれて専属メイドに雇いたいと持ちかけた。
「もしかしたら、僕たちは似た者同士なんじゃあないか? と思っていてね」
「ヴィクトール様。私はただの逃亡奴隷です」
「嘘だ。僕は、君を知りたい」
縋るように見つめる彼の瞳に惹かれた彼女は、彼を救いたいと決意する。
これは、心に消えない傷を負った二人が支え合い、やがて愛し合う物語。