西暦2076年
橘花玲(77)はひとりで珈琲を飲んでいる。
人類の90%は地球に限界を感じ、次々と火星への移住が行われていた。
残りの10%はそれぞれの理由により地球へ残ることを決めた。
橘花玲もそのひとりだ。
彼女は今でも自分の選択が最も正しいと信じている。何故、彼女が「残る」ことを決めたのか。
それは二十歳の頃に起こった怪奇な出逢いから始まった。
あなたは、「真の自分声」を聴いたことはあるだろうか。
自らの行動や発言、選択が本当に自分の意思だと言いきれるだろうか。
人生の最期に「やりきった」と心の底から言えるだろうか。
これはひとりの女性が本当の自分を見付けるきっかけを掴んだ回顧録である。