なにをやっても、うまくいかない。
男は、身を持ちくずした果てに、つまらない泥棒になって、長者の屋敷に盗みに入る。
まんまと捕まったが、暗い、つめたい、こわい、座敷牢から男を救ってくれたのは、長者の娘であった。
その髪は……
真珠を溶かして、絹の糸を染めて、雨と降らせて、集めて、流して、滝と落ちる。眉の線、肩の上で切りそろえられた童髪は、老婆のようにまっ白で、細く、軽く、首をかしげた拍子に、秋の草の風になびくように、さらさらと音を立て、目のなかでひややかに燃える。
「ととさま、かかさまは、本当のととさま、かかさまではないのじゃ」
と、男を連れ出した。
「わしのととさまとかかさまは、どこか、屋敷の外におって、わしを待っておるのじゃ。かかさまの顔は、はっきりと覚えておるぞ」
男と白髪の「姫」は、「姫」の見た夢を手がかりに、「本当のととさま、かかさま」を探す旅に出る。