僕は塔を登っていた。何年こうしているかはちっとも思い出せないのだが、僕は長いこと塔を登っていた。
理由はとんと思いつかず(昔は確固とした考えがあったかもしれないのだが)、ただそこに登るべきものがある、ただそれだけで僕は歩みを進めた。
今は階段をひたすらに上がっているが、この塔はずっと階段であるわけではない。時折、階段を登り続けると、開けた空間に出ることがあった。そこには驚いたことに、人が生活を営む町であったり、獣が住み着く森であったり、はたまた何もない真っ白な空間であったりした。そして決まって、その空間には必ず入り口があり出口があった。
僕がその空間ですることは、ただ、水が流れるように、入り口から入り、出口から出て行くのみであった。
きっとそこに留まることは間違いであり、ため池が濁るように僕も汚れていくのだろう。
だから僕は塔を登らなければならないのだ。
これから語るお話は、そんな少年の物語。