その家系で代々研究されてきた文学作品の、自身で導き出した解釈がスキルに直結する能力を持つ「文異能者」。彼らの社会的地位は高く、日本においては、その中でも特に和歌の解釈の能力を持つ「歌象者」が覇権を握っていた。主人公である盛咲和梅(さかさき・かずめ)はそんな歌象者を生み出す家系の一派に生まれた少女であり、現在高校1年生。父時也(ときなり)のような学者を目指し、日々勉強中である。
ある5月の上旬のこと、和梅は時也の書斎の卓上カレンダーの8月7日の欄に「月食」と書かれているのを見つける。父に天体現象にそこまで興味を示すような印象を抱いていなかった和梅は、少しの違和感を覚える。
そんな中、和梅は、「愛妻白花」(あづま・しらか)と名乗る歌象者の少年と出会う。白花から聞かされた父時也の企みを阻止すべく、和梅は立ち上がる。