黒猫の「わたし」は、東京郊外の住宅街で、両親とともに穏やかな日々を生きている。縁の下の暗がりでまどろみ、子どもたちと追いかけっこをし、街の人々の手に触れ、魚屋の主から魚をもらう。日々は単調だけれど、ほんのりとした温かさと優しさが、そこかしこに漂っている。
ある日、見慣れない影と出会い、自分と似た姿をしたそれと静かな視線を交わすことで、「わたし」はこの場所が自分の帰る場所だと再確認する。
そして夜、両親の体温に挟まれて眠るとき、「わたし」は今日のすべてを思い返す。撫でられた手のぬくもり、触れ合った声の記憶、まだ口にしていないにぼしの存在。明日もきっと、そんな一日が続く気がしている――。
日常のささやかな幸せを、猫の視点から繊細に描いた物語。タイトルは『もふもふはゆく』。