高校二年生の「高槻正人」は、将来プロのシンガーソングライターになることを夢見る平凡な少年だ。いつものように路上ライブをこなす正人は、終わり際に暗い雰囲気の謎の女性に励まされる。決意を新たにする正人だったが、その様子をクラスの不良たちに見つかってしまい、正人は人前で歌うことが怖くなってしまう。
それから約二か月が経ち、正人は彼らへの反骨心で書き始めた自作の歌詞を軽音部の部室に取りに戻っていた。しかし、そんな正人を待ち受けていたのは、あの夜正人を励ました女性だった。
「君のその歌、今ここで歌ってほしいんだ」
「カンナ」と名乗ったその少女と、あの夜声をかけてくれた女性との雰囲気のギャップに違和感を覚える正人だったが、執拗に自分の歌を欲するカンナに懐柔され、再び歌に向き合うことになる。
カンナの献身的なサポートもあり、歌詞の執筆を順調に進めていた正人だったが、ある日不良たちに自分の夢を語ったことがきっかけで相棒のギターを壊されてしまう。失意の正人を見てカンナは号泣して怒り狂う。正人は自分以上に泣いて苦しんでくれるカンナを見て、カンナのために歌うという決意を新たにするのだった。
歌詞の執筆を終えた正人は、満を持してカンナへ歌を披露する。その曲は正人自身の決意とカンナとの思い出が綴られた曲であった。しかし、その曲を聞き終えた途端にカンナは成仏し始めてしまう。カンナは、正人の歌を現世での忘れ物としていた幽霊であり、正人と再会する前に人生に絶望して自殺してしまっていたのだった。
一人現世に取り残された正人。空いている曲のタイトルの欄に「カンナ」と書き加え、一人泣き叫ぶのだった。
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