廃墟となった都の門に、不似合いな立派な身なりの男が現れる。門に住み着いているらしい老人に声をかけられた男は、持っていた酒と引き換えに、老人の昔話を聞かされる。
三十年前、華正国は混乱の中にあった。当代の皇帝は叛逆を企てた叔父を制し、即位して五年。皇帝は未だ男児を得られていなかった。
皇后が出産のときを迎え、皇帝は今度こそ、と皇太子の誕生を期待していた。そのとき、聖帝の治世に現れるとされる鳳凰が顕現した、と叫ぶ声が宮中に響き渡る。
「皇帝陛下万歳!」「聖天子万歳!」の声が上がる中、皇后のもとに駆け付けた皇帝の前に示された赤子は、しかし“女児”であった。
なぜ男児ではないのか、鳳凰は本当に現れたのか。これはなにかの罠なのか。
皇帝は「目撃者」を切り捨て、“皇太子”を育てることを決意する。
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