「―――親不孝な娘を、どうかお許しください」
ある晩、ミッテルハム王国シュヴァルツァー伯爵家の長女、クリスタ・シュヴァルツァーが自室から飛び降りた。
王太子妃の内定が知らされる矢先のことだったらしい。
残された者たちはみな、クリスタ嬢の死を悼み、その喪失を惜しんだ。
王太子殿下は彼女の死を信じきれずに未だ探し続けているという。
ところで、辺境伯領グリーンシールズに住む魔法使いウィルフレッドのもとに1人の少女が訪ねてきた。
魔法使いの幼馴染であり、巷で話題の、若くして世を儚んだ薄幸の伯爵令嬢……であるはずのその少女、クリスタは、開口一番こう言った。
「そのぅ……お知らせした通り、死にに来ました」
クリスタが大切で仕方ない、平民魔法使いウィルフレッドの忍耐が、今、試される!
そしてクリスタにも、何か目的があるようで。
一途な二人の幼馴染が特大にすれ違う、一つ屋根の下でのおはなし。