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短編
疲れた日常を生きる主人公は、満たされない心を、コーヒーで埋めようとしていた。 すぐ近くにあったのは、自販機の缶コーヒー。でも、缶コーヒーは自分へのご褒美にしては陳腐すぎた。 結局主人公は、コーヒーチェーン店に並ぶ。しかしクリスマス前、店は大行列で、並ぶことも諦める主人公。 別にコーヒーが飲みたかったわけじゃないし。駅のホームで寒さに耐えながら電車を待っていると、会社の後輩・冴島君が通りがかる。 「コーヒー店並んでたんだけど、混んでて諦めたんだ。」 そんな会話だけ交わして、冴島君はそのまま通り過ぎっていった――かと思った。 一分も経たずに戻ってきた冴島君の手には、缶コーヒーが2つ、握られていた。 「僕も飲みたかったんで。」 それは陳腐だと思っていたはずの、ただの缶コーヒー。それなのに、冴島君から受け取ったそれは、主人公の手のひらを熱く灯していく。心が――満たされていく。 「ありがと。」 二人で缶の蓋を開け、琥珀色の月を眺めながら、ほどよくぬるいそのコーヒーを飲み始めた。
作品情報
ヒューマンドラマ[文芸]
最終更新日:2022年12月31日
日常 なろうラジオ大賞4 読了時間:約2分(998文字)