頽廃の時代、人類は自らの文化と文明を粉々に破壊した。そのような中にあっても彼らの子たる科学技術は飛躍的に進歩した。万能物質「血の瀝青」の発見と二つの偉大な被造物――生成装置「ビット」と機械人間「フーマニット」がそれである。二つの新たな力を擁し、ワァルドステイトは自滅にひた走る人類を救うべく活動する。人類の自認識を揺るがす新たな混迷の時代の到来だ。
ワァルドステイトの本部とは大洋を挟んで反対側に位置する「学府」は世界中に破滅的な喪失をもたらした頽廃運動を辛くも耐えきった唯一の共同体だ。前時代の遺産を多く守り切ったこの地は人類の精神的支柱として無二の価値を放っている。学府中央の西に隣する都市「北條家領」――貴族の闘争による混乱冷めやらぬこの街で巨大な思惑が始まろうとしていた。
開道炯は瀝青を生成し使用することのできる「覚醒者」だ。彼は一人の女を追っていた。禁制品となった生成装置「コア」を使用し、これを流通させる「媒介者」と呼ばれる危険人物だ。その彼の元に一つの事件が舞い込む。協力関係にある自警団から殺人事件の解決を依頼されたのだ。事件は自警団の最大の支援者である栄秀平が惨殺されたというもの。現場には莫大な「血の瀝青」が瀰漫していた。
事件の背後に追い続けてきた「白の媒介者」の存在を感じ取った彼は、ワァルドステイトからコアの追跡と破壊の任務を帯びて来訪したフーマニット、ルーチェ・グラックス・ウェールスと共に事件の捜査に乗り出すのだった。
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