紀元前後のヘレニズム世界――
アルサケス朝パルティアと共和制ローマ、二大勢力の緩衝地帯に位置するペルシア系の小国アルドヴィ・スーラーの王子イラージュは、「女神の子」と呼ばれていた。
国内に聖域のある女神アナーヒターの巫女と国王とのあいだの聖婚儀礼によって誕生したためである。
第二王子ながら王の後継者と目されていたイラージュは、十八歳の春、女神の託宣を受けた父王に命じられて、王国南部の山岳地帯にすむ《山の民》の野営地を襲撃し、一族を全滅させる。
その帰路、祝宴中のイラージュのもとに、都に残した親衛隊長が早馬で駆けつけてくる。
隊長はイラージュの父王の急死と異母兄の即位を告げた――
*紀元前後のヘレニズム世界をイメージした架空の小王国の物語です。もうかなり昔に書いたものが、部屋の大掃除中にプリントアウト版で出てきたため、一からリライトしてみました。
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