機械の時代より幾星霜を経た魔法の時代。
王立魔法大学を卒業した私は、入社初日から寝坊して遅刻するという鮮烈な社会人デビューを飾ろうとしていた。
このままだと、会社の諸先輩方をドン引きさせてしまうことはほぼ確実であろう。
だが、そんなルーキーにあるまじきデビュー戦はあと一歩のところで阻まれることとなった。
自前の豪脚をフル回転させながら、会社手前の最終コーナーを駆け抜けようとしたところ、うら若き乙女とぶつかってしまったのである。
しかも、相手は我が王国の姫君というのだから驚きだ。
見つめ合う私と姫。
そして、私と姫がゆっくりと近づいてひとつになろうとしたとき、突如、目の前で爆発事故が起きた。
あたりを埋め尽くすかのようなまばゆい光に飲み込まれそうになる私たち。
だが、私のとっさの判断により、なんとか姫を守ることに成功する。
かくして遅刻しそうになった私は、姫を守った栄誉とともに、新卒ながら魔術研究大臣という地位を手中に収めることとなった。
我が生涯はこれにて安泰ということなのだろう。
もしやこれが運命というやつなのだろうか。
――と、思っていたところ、その運命は私の性根と同じようにグニャグニャとねじ曲がっていたようで、おかしな方向へと進み始める。
なんと、数百年ぶりに魔王が誕生してしまったのだ。
王国は、すぐさま民と領土を守るために魔術師団を防衛に当たらせることとなる。
ついでに、一国の大臣たる私も……。
これは愛と勇気を胸に世界を守ろうとした者たちの戦い。
私と姫と魔術師団の物語である。