愛する夫との間にようやく授かった命を、大切に大切に育てていた。胎動に涙し、名を呼び、未来を夢見ながら、お腹の中で育ててきた赤ん坊。それは彼女にとって世界そのものであり、希望だった。
だが、ある日──その命は突然、終わりを迎える。
赤ん坊は、父である夫の手によって殺された。
なぜ、そんなことが起こったのか。
夫の口から語られるのは、言い訳のような後悔、救いのない懺悔。
命を奪うのは一瞬。けれど、命を育てるには、愛と痛みと時間が要る。
志帆は母としての自分と、妻としての自分の間で引き裂かれながら、やがてひとつの決断に至る──
「母でいるために、妻を殺す。」
作品情報
ヒューマンドラマ[文芸]
R15残酷な描写あり
最終更新日:2025年07月27日
シリアス 母親の愛
読了時間:約8分(3,831文字)