僕は所属する劇団が持つ練習場の中で鏡の前に立つ。発声練習の最中で、鏡の傍に置いた今月の公演の売上表を見つめ、思わず笑みが出た。
貴族は好奇心旺盛だ。誰かの不幸話には真っ先に食いつく。庶民相手をするよりも、金を持つ相手に劇を披露する方が金になることは明らかだった
今まで入っていたそこそこ大きな庶民向けの劇団を辞めて、個人で活動することにした。どのみち劇団では孤立していた。ちょうど良かったと思った。
売上が上がってきた頃、自分1人で披露することを条件に、その劇団に売り上げの何割かを取られる代わりに、名だけを借りて披露し始めた