目覚めたら、剣と魔法のRPGゲーム『ワールド・オブ・ファンタジー(略してWOF)』の主人公ルチルに転生していた。主人公なのに、剣も魔法も使えないルチルのスキルは猛獣使い。ならば、ルチルの相棒、大きな美猫のジャスパーに会いに行こう! 待っていてね、私のモフモフちゃん! ……と、意気揚々と会いに向かったのに、そこにいたのはゲームに登場しない男だった。え? この男が、私の相棒なの? あれ? 武器を持ってない? ん? 職業は、吟遊詩人?? これは、詰んだというやつでは? いやいや、諦めるのはまだ早い! 自分の力だけで、どうにかします!!
「行くわよ。そこの荷物を持ってきて」
「頑張るルチルのために、歌を歌おう」
「歌わなくていい。それよりも、少しくらい荷物を持ってよ!」
「足が長く、背も高い。顔も小さく、抜群のスタイルの私だが、楽器より重い物は持てないんだ」
――なにが、楽器より重たい物は持てないよっ! 楽器すら持ってないじゃない!!
◆取り柄が見た目だけの吟遊詩人と、魔法の使えない体力少女の物語◆