1999年3月1日。
南太平洋上で、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は正体不明の轟音を検知した。
「ユリア」と名付けられたその音は、海洋生物や地質的活動の音でもない。まるで世界の理を揺るがすかのような15秒間の響きだった。
同刻、その海上を航行していた豪華客船「黎明」号が、大きく跳ね上がる。
まるで見えない何かに弾かれたように。
乗客たちは気付く術も無かった。
その瞬間、見えざる波動が、彼らの身体を通過したことを。
そして、彼らのDNAに「何か」が深く刻まれたことを。
──やがて時が経ち、研究者たちはようやく真実に辿り着く。
あの日の「ユリア」とは、異界の扉が開かれた音だったのだと。
※本作品は『カクヨム』で先行公開してます。