その世界には、音楽というものがなかった。
歌も、旋律も、響きも、誰の記憶にも残っていない。
そんな異世界に転生した少年・カナデは、ふとした瞬間に一つの歌を口ずさむ。
それは、彼の心の奥底に眠っていた“かつての記憶”からこぼれ落ちた、懐かしい調べだった。
すると、止まっていたはずの風が揺れ、乾いた土に芽が吹き、聞いたこともない「何か」が人々の胸を打った。
妹のミトと共に、忘れられた「音」を手がかりに歩み始める日々。
静かな村に少しずつ変化が訪れ、やがて歌は人から人へと伝わり、世界のかたちそのものを揺るがしていく。
これは、音楽を失った世界で、もう一度“心が震える瞬間”を取り戻そうとする少年の物語。
奏でられるのは、誰かのためのやさしい歌。
音が世界を変える、その始まりの物語。
※カクヨムさんで再編集版を投稿中です。