かつては色で溢れていたその世界はある日、失色(ロスト)と呼ばれる大事件を機に、一夜にして色を失った。
それから数十年後、モノの輪郭と濃淡だけが残るその世界が、ほとんどの人間にとって当たり前になっていた。
「その昔、‘‘色’’というものがあったらしい」
そんな言葉が、作り話のように世界中を巡っている時代。
今を生きるほとんどの人間はその目で色を見た事がなく、正しく想像することも出来ない。
そんな世界において、誰もが知る、ある1つの伝説があった。
「この世界のどこかに、‘‘色’’を生み出すことの出来る人間がいる」
塗色士
これは、1人の男が世界を色で染めあげるまでの物語。
彼は旅の中で、多くの人と出会い、多くの人生を彩っていく。