現代社会には、老若男女を問わず、誰もが人間関係や将来に対する不安を抱え、悩み苦しんでいる。
中には、友人や家族にその悩みを打ち明けられず、一人で抱え込んでいる人も少なくない。
萌白悠稀(もしろゆうき)は、そんな悩みを抱える人々に寄り添い、相談に乗る「相談屋」として活動している。
彼のやり方は効率的ではなく、悩みを根本から解決しようとはしない。
彼の目指すところは、ただ悩みを共有し、心の重荷を少しでも軽くすること。
その方法で、これまで多くの人々を助けてきた。
だが、萌白は次の「相談」をもって、相談屋を辞めるつもりでいた。
そんな折、最後の相談者として訪れたのは、儚げな印象を持ちながらも、どこか掴みどころのない、常に微笑みを絶やさない女性・神田夢廻(かんだゆめ)だった。
彼女の「相談」は、あまりにも荒唐無稽だった。
余命が数年と宣告された彼女が唯一望んでいたのは、結婚したパートナーと共に残りの時間を過ごし、幸せな最後を迎えることだった。
そのため、夢廻は萌白にその願いを叶えて欲しいと件の『相談』を持ちかけた。
最初、萌白はその相談を断ろうとしたが、夢廻の姿に自分の過去を重ね、彼女の願いを受け入れることを決意する。
二人は限られた時間を共に過ごす中で、次第にお互いの心情に変化を感じ始める。
限られた時間を彼女とともに過ごす中で、萌白の中に芽生えた想いとは。
これは、必ず終わりが来るという事実を受け入れながらも、いつまでも続いて欲しいと思う幸せに、二人とその周囲の人々がどう向き合っていくのかを描いた物語。