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代表作 連載 14エピソード
雪と死に閉ざされた流刑地。そこに暮らす少年ライグは、飢えと寒さに耐えながらも、誇りだけは失わずに生きていた。帝国の不正に声を上げ処刑された父。やがて病に倒れた母。すべてを奪われ、誰の手も差し伸べてくれなかったあの夜以来、彼は孤独のなかで己の信念だけを頼りに歩き続けていた。 そんなある夜、不思議な“気配”に導かれて森へと足を踏み入れたライグは、雪の中で瀕死の子犬と出会う。銀白の毛並みと黒曜石のような瞳を持つその小さな命――バルとの邂逅は、少年の心にかすかな灯火をともした。命の重さと引き換えに、初めて「守りたい」と願った彼は、限られた食糧と寒さの中でバルを看病する。 共に過ごす日々は決して穏やかではなかった。村人の冷たい視線、寄せられる疑念と偏見。それでもライグは、名もなきその命に“バル”という名前を与え、共に歩むことを選ぶ。孤独のなかで芽生えた絆は、少年にとって初めての“誰かと在る”という感覚だった。 そんなある日、ライグとバルは狩りの途中で凶暴な獣に襲われる。死の瀬戸際に現れたのは、灰の外套を纏う謎の剣士・ザイラス。その一振りは、ライグが今まで見たどの剣よりも鋭く、そして静かだった。 命を救われたライグは、ザイラスに弟子入りを懇願する。だが、「剣を持つ理由を知らぬ者に教えることはできない」と拒まれる。それでも諦めきれず、父の遺志と己の想いをぶつけるライグの姿に、ザイラスは試すように枝での手合わせを持ちかける。何度倒されても立ち上がる少年の姿に、彼はようやく「ついてこい」と告げるのだった。 こうして、凍てついた絶望の地で、少年の旅は静かに始まった。
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー]
最終更新日:2025年05月18日
ハイファンタジー 獣人 精霊 成長 バトル ヒロインは1人 ペット枠の狼 読了時間:約100分(49,969文字)