目が覚めたとき、俺は一本の――それも、何百年も生きてきたような――大樹になっていた。
動けない。しゃべれない。
けれど、風を感じ、土を飲み込み、虫や鳥の動きを皮膚のように受け取る。
そして何より、大地の奥から響く“声なきささやき”が、俺の中に流れ込んでくる。
森の奥で、ただ静かに時を重ねるはずだった。
けれど根を張り、土に溶け、広がっていくうちに――
俺は知ってしまった。この土地に染みついた、腐りかけた権力と歪んだ希望の匂いを。
誰かが俺の幹に手を当て、祈り、泣き、願いを託すたびに、
俺の中に“何か”が芽吹いていく。
それは希望か。
それとも、絶望か。
あるいは、世界を覆い尽くすほどの――変革の萌芽か。
動けないはずの木が、
しゃべれないはずの存在が、
静かに、そして確かに、この国の運命を揺るがしていく。
これは、「ただ在る」ことから始まった、
世界との“接続”の物語。