赤羽の喧騒の中で異変は静かに始まっていた。
異臭が街に広がると、人々は次々と倒れ、救急車のサイレンが鳴り響く。
異臭騒ぎの中で意識を失った長瀬良治は、気づけば病院の一室にいた。だが、そこはただの病室ではなかった。異常な静寂、微かに聞こえる囁き、不自然に揺らぐ影——まるで現実が少しずつ侵食されているかのようだった。
同じ被害者たちも次々と異常を訴え、やがて「それ」が現れる。
声なき存在は長瀬に語りかける。「選べ」と。
果たして、彼が目にしたものは幻覚なのか、それともこの世界の境界が崩れ始めた証なのか——
消えた被害者、歪む空間、囁きの正体。そして、向こう側に続く扉はもう開かれている。