名前を呼ばれなかった風は、
誰にも気づかれず、空に溶けていくー
山あいの小さな村で、ひとりの少年が倒れていた。
記憶はない。名前もない。自分がどこから来たのかも、わからない。
彼に手を差し伸べたのは、風の音に耳を澄ませる少女・アム。
彼女は、こう言った。
「風が、きみを呼んだんだ」
言葉にならなかった想いが風に宿り、
“誰かの声”にふれたとき、再びめぐる――
これは、風に名前を贈ることが
「ここにいた」という証になる物語。
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