かつて、「終焉の詠い手」としてその名を轟かせた一人の魔導士がいた。
彼女の名は、シルヴィア・ヴィア・ヴェリダナ。
王国の第二王女として生を受け、数多の戦火を鎮め、最後には国を終わらせた者。
自らの命と引き換えに、王政に終止符を打ったその日――
すべてが終わったはずだった。
50年後。
辺境の小さな村で彼女は目を覚ます。
変わり果てた時代。名も知らぬ土地。誰も自分を知らない場所。
そこにあったのは、かつて一度も手にしたことのない、穏やかな日常だった。
これは――
全てを終えた少女が、「名もなき今」を生き直す物語。