世界は、“救済”された。
勇者セリオンの手によって魔族は滅び、秩序は保たれ、人々は歓喜した。
だがそれは、すべてを“選別”する世界の始まりだった。
神の名のもとに命を価値で測り、正義を語って粛清を行う、冷たい支配。
そんな中、すべてを失ったはずの存在――かつての魔王が、静かに目を覚ます。
闇の太刀を手にしたその男は、もはや悪ではなかった。
彼は知ってしまったのだ。
「正義」の名のもとに踏みにじられる、誰にも救われない命があるということを。
闇と光が交差するこの世界で、本当の「美しさ」とは何か?
奪われた仲間たちの想いを胸に、“魔王”は世界に問いを突きつける。
正義のために、何を犠牲にできるのか。
そして、救いとは誰のためにあるのか――
すべての“救済”に、終止符を。