作品一覧全2件
連載 完結済 5エピソード
「もしもその再会を運命と呼ぶのなら、やっぱり僕は少しだけ悲しい。それは僕が何よりも望んでいなかったものだから」  八月の最終日、午前五時。花火セットの入ったレジ袋を片手に持った小高葵の前に彼女は現れた。五年前の夏、小学校の教室で「小説家になってね」と約束を交わした彼女。名を星和香那と言った。 「ロストデイ」、八月三十一日が失われた世界で彼女はその正体を突き止めようとし、同時に葵と交わした約束を果たそうともしていた。約束は守られるものだから。星の光のように眩しい彼女は、どこまでも正しく在ろうとしていたから。  葵にとっては彼女の全てが絶望だった。自分はもう約束なんてどうでもよくて、小説を書くつもりだって無かったのに。彼女の存在が葵の全てを否定する。なのに、その光は歩みを止める事を知らずに彼の手を引こうとする。 葵が小説を止めた理由、ロストデイの正体、そして二人の前に現れる「女神様」という小さな女の子の存在。和香那は真っ直ぐに、全てに立ち向かおうとする。 そして更に五年後の二十二歳の夏、二人にとって残酷な真実が突き付けられたその時、世界の全てがひっくり返るのだった。 何もかもが反転した世界で、和香那はそれでも星のように光っていられるのか。葵は彼女の隣にいられるのか。物語は「最初の一行目から既に始まっている」。 一番星のように遠い君へ捧ぐ、一編の小説なんかじゃ足りないくらいの、永遠のように長い告白を言葉にした物語。
作品情報
現実世界[恋愛]
最終更新日:2025年06月24日
ネトコン13 集英社小説大賞6 男主人公 学園 現代 青春 ネトコン13感想 読了時間:約259分(129,378文字)
連載 完結済 5エピソード
「私の夢は、全人類を幸福にする事です」  紙透夏架は転校初日、開口一番に宣言した。その言葉が宇宙で最も綺麗だと信じて疑わないみたいに、彼女の瞳は強く澄んでいた。  教室の喧騒を聞き流しながら、僕は窓の外の青空を眺めていた。彼女の言葉の真意を知りたいなどとは思わなかったが、その覚悟がどれほどのものなのか、少しだけ興味があったのは否めない。梅雨の陰鬱とした空気が抜け去った後の、夏の始まりみたいな日だった。  紙透夏架がクラスを牛耳って虐めの主犯格になるのは、それから僅か半月後の話だ。 *  *  *  *  *  紙透夏架は高校二年の夏に名執と同じクラスに転校してきた少女だった。紙透の夢は自分のピアノで全人類を幸福にすること。しかし紙透はどういうわけか同級生である名執崇音を虐め始める。それはクラスや学年に伝播していき、名執は学年全体から虐めを受けるようになった。そしてその末、紙透はなぜか自殺をするのだった。  だがその後、名執は幽霊となった紙透と再会する。紙透は傲慢にも「成仏したくない」「だから私を不幸にしろ」と名執に言う。そして同時に「私は、自殺したんですか?」とも。  紙透が成仏したくない理由とは? 彼女にとってピアノとは? 彼女は本当に自殺したのか? 誰よりも忌み嫌う名執と共にいる事を選んだ理由とは?  名執がかつての加害者である紙透に協力する目的は? 彼が追い求める「あの日の夢」「あの子の〝手〟」とは? そして、二人にとっての〝幸福の唄〟とは何なのか?  全ての謎が一つに集約された時、ピアノの〝シ〟の音が大きく意味を変えてそこに鳴り響く。
作品情報
現実世界[恋愛]
最終更新日:2025年06月24日
ネトコン13 集英社小説大賞6 男主人公 学園 現代 青春 ネトコン13感想 幽霊 読了時間:約210分(104,760文字)