社畜として毎日遅くまで働き、心も体もすっかり擦り減ってしまった裕翔。
唯一の癒しは、帰宅したときに迎えてくれる、小さな黒猫のテンだった。
いつも無邪気で元気いっぱいなテンは、疲れきった裕翔をそっと慰めるように寄り添い、その小さな体温だけが裕翔を現実につなぎとめていた。
そんなある夜、仕事から帰宅しタバコをくゆらせている裕翔を、心配そうに見つめるテンの体からふわりと白い煙が立ち上る。
目を疑う裕翔の前で、テンは人間の姿へと変わっていた――。
疲れた心を抱えた青年と、無邪気で健気な黒猫――いや、人間になったテンが織りなす、優しくて小さな再生の物語。