中性的で可愛らしい顔立ちを武器に「善人」を演じてきた僕は、いつも誰にも責められず、穏やかに生きてきた――他人の不幸には目を背け、自分の責任には絶対に関わらないという“上手な生き方”で。
しかしある日、通勤中のビルで爆弾テロに巻き込まれ、謎の悪魔に「誰か一人を選べば他は助かる」と迫られる。
責任を負うのが怖くて、僕は“選ばなかった”。
多くの命が失われる中、奇跡的に生き残った僕は世間から「勇敢な生存者」と持ち上げられるが、心の奥には拭いきれない罪悪感が残る。
――けれど、人は忘れる。罪も、死者も、そして反省も。
自己弁護と演技の中で、再び“善人”を装って生きていく僕。
これは、「責任だけは取りたくない僕」が選び取った、薄っぺらくて冷酷な生存戦略の物語。