作品一覧全3件
短編
都会で心に深い傷を負い、小さな田舎町に移り住んだ青年・水島陽介。 かつては雑誌編集者として人の言葉を世に届けていた彼は、 ある事件をきっかけに言葉を失い、今は町外れの古書店「縁」で静かに暮らしている。   ある春の日、陽介のもとに現れたのは、 明るく無邪気にふるまいながら、どこか影を感じさせる少女・柚木澪だった。 彼女は“風に託す手紙”――「風手紙」と呼ぶ小さな便箋を古書店に残し、 陽介はその言葉に少しずつ心を開いていく。   季節の移ろいとともに、ふたりの距離は静かに縮まってゆく。 だが、澪には生まれつきの病があった。 「時間には限りがあるかもしれない」と語る彼女に、 陽介は何ができるのか、自問しながら日々を重ねていく。   やがて冬。 澪は療養のため町を離れる決断をし、 陽介は彼女の不在の中でも手紙を書き続ける。 風の音に耳をすませながら、再び会える日を信じて。   そして春。 風がふたたび町に戻ってきたとき、 ふたりの物語は静かに、しかし確かに交差する。   “たとえ離れていても、風がつないでくれる。” そんな風のような、切なくも温かなラブストーリー。
作品情報
現実世界[恋愛]
最終更新日:2025年07月12日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 アイリスIF7大賞 アイデジIR大賞 シリアス ダーク 男主人公 現代 日常 読了時間:約19分(9,125文字)
短編
あらすじ 『君が最後の名前だった』 二十八歳の広告代理店勤務・佐原遥は、仕事に追われる日々の中で、自分の心がすり減っていることに気づかずにいた。そんなある雨の日、偶然再会したのは、大学時代に深く愛し合いながらも別れた元恋人・橘晴人だった。五年の空白を経て交わされた一言が、止まっていた遥の時間を静かに動かしはじめる。 再会をきっかけに、ふたりはかつての記憶を辿りながら、現在の自分たちと向き合っていく。 けれど、互いの胸にはまだ消化しきれない「過去」が残っていた。 地方での経験、別れの理由、言えなかった言葉。 晴人の中にある“静けさの理由”を知ったとき、遥は初めて「赦す」ことの意味を理解する。 名前を呼び合うこと——それは、誰かを必要とするということ。 そして、自分自身を認めるということ。 互いにとってその名前が「最後の名前」になると気づいたとき、ふたりの物語はやさしく重なり合っていく。 これは、“もう一度愛する”ことを恐れなくなったふたりの、静かでまっすぐなラブストーリー。
作品情報
現実世界[恋愛]
最終更新日:2025年07月07日
ネトコン13 集英社小説大賞6 123大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 アイリスIF7大賞 アイデジIR大賞 シリアス 女主人公 現代 職業もの 日常 読了時間:約20分(9,817文字)
連載 1エピソード
あらすじ 高校三年生の**樹(いつき)**は、卒業を目前に控えたある日、 2年前に転校していった少女──**浅海紬(あさみ・つむぎ)**から、突然一通のメールを受け取る。 「約束、覚えてる?」 その言葉は、春の日の淡い記憶を呼び覚ます。 教室、図書室、帰り道──交わした言葉は少なくても、忘れられない時間だった。 しかし紬は、卒業式には**「来られない」**という。 そして樹は知る。 あの別れの朝、何も言えなかった自分が、彼女を深く傷つけていたことを。 言えなかったこと、呼べなかった名前。 それでも再び言葉を交わすため、樹は一通の“返事”を送る。 それは、終わりではなく、新しい季節へのはじまりだった。 そして迎える春の駅前。 桜の下で交わされた、たったひとこと。 ──「おかえり」 ──「ただいま」 これは、名前を呼ぶことでやっと始まる、 静かで、あたたかな再会の物語。
作品情報
現実世界[恋愛]
最終更新日:2025年07月07日
集英社小説大賞6 シリアス 男主人公 女主人公 学園 現代 日常 ハッピーエンド 青春 メール 読了時間:約18分(8,637文字)