敗戦から十年。
かつて帝国と呼ばれたこの国は、瓦礫と沈黙に包まれていた。
戦中、孤島の研究所で行われていたのは、人間に“能力”を埋め込む極秘の人体実験。
だが敗戦とともに施設は崩壊し、被験者たちは研究所から逃げ出した。
そしてここにも、能力を埋め込まれた男がいた。
右腕に宿る力とともに、彼は“逃げた者たち”の行方を追っている。
理由はただ一つ。
敗戦の日、唯一この計画を止めようとしていた──
そして自分を人間として扱ってくれた研究者が、何者かに殺されたからだ。
犯人は、あの混乱の中で姿を消した能力者の一人に違いない。
殺された研究者から託されたノートには、こう記されていた。
「能力を奪えば、その者の記憶を受け継ぐことができる」。
男は能力を回収しながら、断片的な真実をつなぎ合わせていく。
だが能力の回収には、埋め込まれた部位を取り出し、
それを移植する“特殊な術”が必要だった。
そして今、彼はその継承者──**鏡 遙(かがみ はるか)**を攫い、共に旅へと踏み出す。
これは、戦争が終わったはずの国で、一人の男が続ける“戦争の後始末”の物語。
作品情報
ハイファンタジー[ファンタジー]
残酷な描写あり
最終更新日:2025年07月17日
戦争 れ 恋愛 ふ
読了時間:約11分(5,429文字)