―――チリィーン、
と。鈴が鳴る。
その音で思い出すのは、中一の夏に体験した少し不思議な出来事だ。
家の事情で、八月の初めからお盆までの間、父方の祖父母の家に預けられることになった香崎雪時(こうさき・ゆきとき)。
六年ぶりに訪れた祖父母の家——父が使っていた部屋に荷物を置いていると、紐の付いた鈴を見つけた。
何となく見たことがあるその鈴は、幼い頃、雪時が家探しして見つけたものだと祖母に言われる。
探していた理由を思い出さないまま、雪時はソレを持って散歩に出掛けた。
―――にゃあ、
と。出かけた矢先に、一匹のブチ猫と出会う。
鼻の下に〝ちょび髭〟のような模様を持つその猫に誘われ、たどり着いたのは山の中にある古びた神社。
そして、そこには浴衣を着た女の子がいた――。
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