その鏡はただそこにあった。映しこんだ願いを反射させ覗いた者とその願いが合わされば無償で叶え、願いの姿に対し覗いた者が釣り合わなければその分の代償をもらい、変えることで補い願いを叶える。そういう性質の鏡が一枚、世の中の数多ある人間が使うための道具の一つとしてただただそこにあった。鏡を巡って争ったのも人、性質に解釈をつけたのも人、引き起こされた惨事の原因に謂わくをつけ恐怖したのも人。
長い歴史を経た今はその鏡は彷徨う子供の手にあった。
願うことのために願った祈りが叶ったことで、皮肉にも叶えたかった相手を失い死ぬことのできぬ亡霊となった哀れな子供。
人々の願いを映しその結末をただただ見届ていく。
人の幾多の願いの中で自分の求める「幸福」に終わる願いの姿を求めて。
※一時期にピクシブにupしていた話です。